『BUTTER』|食と人間関係の怖さと魅力を描いた物語

小説

実際にあった婚活殺人事件をモチーフとした、人間の欲望と社会の歪みを描いた作品です。

食に対するこだわりも強く、最後まで読み応えのある一冊です。

今回紹介する本はこちらです👇

食の描写がとにかく印象的

独身男性の財産を奪い、殺害した疑いがあるとして逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。

若くもなく美しいとはいえないふくよかな女性が男たちを虜にした理由とは?

ゴシップ週刊誌記者の里佳が面会を取り付け、カジマナの人生を追体験することで真相に迫っていく物語。

この本の1番の魅力は、なんといってもタイトルにもあるBUTTERを使った料理やそれを食べるシーンの描写が数多く描かれており、読んでいるとバターの芳醇な香りがしてきました。

里佳はカジマナの言われるがままに

色々な料理を楽しむようになり

元々背が高く細身だった体型も、周りに心配されるほどに変わっていきます。

そして、それに伴って食への関心が高まっていく里佳。

カジマナという人物の不気味さ

決して若くもなく美しくもなくふくよかな女性。

世間ではそういわれているカジマナでしたが、

カジマナとの面会を繰り返すうちに段々とカジマナに翻弄されていくような描写が描かれています。

深く知っていくとともにカジマナへの印象がどんどん変わっていく。

その様子はとても不気味で、はたからみるとまるで洗脳されているかのような状態でした。

食と人生はつながっていると感じた

この本を読んでいて食と人間はとても深いつながりで結ばれていると実感しました。

食への執着は生きることへの執着に繋がると思います。

食事への向き合い方、楽しみ方にも人柄や人生感が出るような気がしました。

「胃袋を掴む」

よく聞く言葉ですが、食欲を制することはその人を支配することになるのでは?

カジマナに支配されていく里佳たちをみているとそんなふうにも思えました。

作中で特に印象に残っているのが、篠井さんが伶子にインスタントラーメンを作るシーンです。

「作り手の気持ちを受け取るには、食べる側にもエネルギーが必要。だから、おいしさにも距離感が大切」

そんな言葉がとても印象的でした。

手の込んだ料理はもちろん魅力的ですが、それを受け取る側にも余裕が必要で、時にはインスタントのような気軽なものがちょうどいいこともある。

これは食事だけでなく、人間関係や人生にも当てはまることだと感じました。

曖昧なラストだからこそ考えさせられる

中盤から終盤にかけては、里佳やその周りの人たちの人生が大きく変わっていきます。

カジマナ、その被害者の姉、伶子、そしてずっとカジマナと接してきた里佳。

現代社会における不安や葛藤、コンプレックスなど誰しも持っているものだと思います。

各々がそういった悩みを食を通じて打ち砕いていくその姿がこの本で読み取れた気がします。

📚今回読んだ本

▶︎こんな人におすすめです。

・人間関係や心理描写が好きな人

・食の描写を楽しみたい人

・余韻の残る作品を読みたい人

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