「生きる」とは何なのか?
公認会計士として働く岡田は高校の同級生・
横井に500万円を貸したことから人生が狂い始めるーーー。
私の好きな芸人さんの1人でもあり、芥川賞作家でもある又吉直樹さん。
待望の最新作が出たので、読んでみました。
今回紹介する本はこちら👇
又吉ワールドに引き込まれる、人の内面の描写
又吉直樹さん作品の特徴は人間の醜いところや、思っていても口に出せないような闇を表現してくれているところだと思っています。
もちろんこの捉え方は私個人的なものなので人それぞれ感じ方は違うと思います。
明るい物語ではなく、腹の底からダメージを喰らうようなそんな作品が多いと私は感じています。
特に世間とのズレやギャップを感じている人の内面の描写が上手く世界観に引き込まれてしまいます。
今回の『生きとるわ』もそんな人の在り方や自分にとっての正義、悪について問いかけられているような物語です。
読んでる途中に
「なんでそうなっちゃうの?」
「おいおい、それはやめとけよ」
と何度思ったことか…。
お金を貸す側にも、理由があるのかもしれない
公認会計士・岡田、同級生・横井を中心に物語が回っていきます。
岡田は横井に500万円もの大金を貸したことから人生が狂い始めていました。
そんな中、高校の同級生・大倉、広瀬から横井を見かけたという噂を聞きます。
そして、2023年阪神が38年ぶりのリーグ優勝を決めた日。
道頓堀川に飛び込みはしゃぐ横井の姿を見かけ、借金を返すよう詰め寄ります。
口先だけでその場を逃れようとする横井に一同は苛立ちを隠せません。
岡田は横井を信じるたびに裏切られ、もう信じないと決めてもこいつならやってくれるんじゃないかと思い、また裏切られてしまう。
そんなことを繰り返していました。
しかし、妻に内緒で500万円を貸したことにより離婚の危機に陥ります。
横井に関わり、それをどうにかしようとするたびに岡田の人生は堕落していきます。
どこで歯車が狂ったのか?
お金を借りにきた横井が全て悪いのか?
途中までは、加害者・横井、被害者・岡田の構図で間違いないと思っていました。
私も友達にお金を貸し、期限に返してもらおうとすると金がないからと逆ギレされ助けたはずなのにこちらが嫌な気持ちになってしまうことを経験していたからです。
しかし、横井が岡田に
「俺は一方的に与えてもらっただけじゃなくて、俺も岡田に何かを与えていたつもりだった」
と言いました。
だからこそ、岡田は唯一無二の存在だと思っていたと。
ここがとても深いなと思いました。
お金を借りたのは事実だが、岡田も何かしら得るものがあるから貸してくれるのだろうと思っていたからお金を貸すという役割を与えていたと横井は思ったみたいです。
大金を貸すという決断をしたのは岡田自身。
何も得られない、意味がないと思えば貸さなければよかった。
そこには横井を見下すことによる優越感なのか、はたまた罪悪感からくるものなのか。
何かに縋ることで、自分の心を守っている
一方、ミナミでバーを営む大倉は、昔から都市伝説や陰謀論に興味がありました。
そして、横井とのイザコザの中でおかしくなったのかアヌンナキによる陰謀論だ!
と言い始めます。
ただおかしくなっただけの可能性もありますが、何かおかしなことを言っていたり、何かに固執したりするのは自分の心の均衡を保つためなのではないか。
とも思えてきました。
何かのせいにしたり、何かを演じたりすることによって「◯◯だから仕方ない」と言い訳ができ、拠り所を作ることで心が壊れることを防いでいたのかもしれません。
岡田も横井に裏切られ、横井のせいで堕落していると思い込み、自分がクズになっていくことを認められないのではないか。
そう捉えることもできました。
宗教や占いなどにのめり込む人こういった心の拠り所を求めているのかもしれない。
人間の防衛本能が働いてそうなっているのかもしれません。
岡田の堕落を見て感じた、心のざわつき
横井に関わるにつれ、堕落していく岡田を見ているとなんだか心がざわつきました。
世間一般でみれば、公認会計士として働き順風満帆に見える岡田の人生も本人からするとまた違って見えているのかもしれません。
冷静に周りから見るとそれはやめたほうがいいと思える行動も、その時の岡田には最善策に見えていたり、言い分があるのだと思います。
そんな岡田を見ていると、もし同じ立場になったら今自分がこうしたほうがいいのでと思う行動が取れるのかな?
もし、同じ立場になれば自分自身も同じように堕落してしまうかもしれない。
そんな思いもよぎり、心に突き刺さるものがあったのだと思います。
人それぞれの「正しさ」がある
人間同士の関わり合いとはいえ、人それぞれに価値観や考え方があります。
この物語では、そんな人それぞれの「正しさ」
とは何か。
それぞれの「正しさ」があり、自分の正しさが相手にとっての正しさとは限りません。
ここではお金の貸し借りが出てきましたが、一般的に言えば、借りて返さない人が悪です。
しかし、貸すことにメリットを感じているから貸してくれたと思う人もいるかもしれません。横井みたいにダメなら断ればよかったのにという人もいると思います。
互いにWin-Winだから。上も下もないという考え方もあるでしょう。
ここで学べたことは、そういった価値観やそれぞれの正しさは人や立場によって違うということでした。
言葉に出さないと伝わらないし、自分の常識が誰かの非常識である可能性は大いにあります。
この物語を最後まで読んでアインシュタインの有名な言葉を思い出しました。
「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションである。」
少しずれているかもしれませんが、生きてきた道が違うから身につけた常識も違う。つまりはこういうことなんだろうなと思い、本を閉じました。
📚今回読んだ本
▶︎こんな人におすすめ
・人間の醜さや心の奥にある感情を描いた作品が好きな人
・「誰が正しいのか?」と考えさせられるような小説が読みたい人
・読後にいろいろ考えさせられる、重めの作品が好きな人
▶︎こんな人には合わないかも
・明るく楽しい気分になれる小説を読みたい人
・読後にモヤモヤしたり、考えさせられたりする作品が苦手な人
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