2026年本屋大賞候補にノミネートされ、第3位となった村山由佳さんの『PRIZE』
著者の村山さんが
「誰もが身に覚えのある『承認欲求』」
をテーマに書かれた作品だそうです。
数々のベストセラーを生み出し、映像化作品も多数かかえる売れっ子作家・天羽カインが名誉ある文学賞「直木賞」を目指しもがいている様を本ができるまでの裏側と一緒に描かれた物語です。
今回紹介する本はこちら👇
「直木賞作家」という肩書きに憧れる天羽カイン
本を書けば売れるベストセラー作家・天羽カイン。
ベストセラーや映像化作品などを多数抱え、本屋大賞の受賞歴もある有名作家である天羽。
我が子のように可愛い本のためにはファンサービスをも徹底しており、ファンも多くいます。
そんな天羽は文学賞の一つ、「直木賞」が獲れずヤキモキします。
「直木賞」とは、1935年に亡くなった作家・直木三十五さんを記念して作られた賞であり、年に2回プロの作家によって選考されます。
書店員が選ぶ「本屋大賞」とは違い、作家などの選考委員から評価される、作家にとって非常に大きな意味を持つ文学賞です。
周りからの評価と違い、プロから認められないことが悔しくて仕方がない天羽。
しかし、売れっ子作家である天羽に何が悪くて「直木賞」が獲れないのかを指摘してくれる人はいません。
「直木賞」発表の日、結果が出るまで出版社などの関係者を集めて「待ち会」を行います。
発表まではみんな口を揃えて今回は受賞間違いなしと褒めちぎりますが、いざ受賞できないとわかると何も言ってくれない編集者たちに嫌気がさしてきます。
そんな中、しっかりと天羽カインを想って想いを伝えてくれる編集者・千紘との距離が少しずつ縮まっていくことに…。
作家と編集者、近づきすぎた二人の距離
どうしても「直木賞」と獲りたい天羽に千紘は賞を獲るために厳しく指摘していくと宣言。
今まで信頼していた編集者に冷たくあしらわれますます千紘への信頼が厚くなっていきます。
岩盤浴やエステに行くなど、作家と編集者の垣根を超えて親友のような関係になっていきます。
周りからも控えた方がいいと言われるくらい異常なほど密接になっていく二人。
そんな姿を見ると、天羽カインではなく天野佳代子そのものが見えてきたような気がしました。
時には天羽の家に泊まり込みで直しをする日々を送るなど、二人は言葉通り寝る間も惜しんで作業を続けます。
「世に送り出した作品は読み返さない」
それくらい完璧に仕上げて我が子のように大切に送り出す。
天羽にはそんな強いこだわりがありました。
二人で意見を出し合いながら作品を作り上げました。
そして、「直木賞」の候補作にノミネートされます。
ここまで順調にきている天羽は普段あまり見ない直木賞候補作の紹介動画を見ます。
そこで衝撃の事実を知ることになります。
人との距離が近くなりすぎる怖さ
「恋は盲目。」
などと言いますが、人が何かに夢中になると視野が狭くなったり、見えていたものまで見えなくなったりすることはあると思います。
この物語の中でも人との距離感の大切さを語ってくれていました。
近づきすぎることで慣れや甘えによって踏み込み過ぎたり、
逆に距離が遠いと心や熱意が伝わらなかったりと人との距離感はとても難しいです。
この作品では、作家と編集者という形でよりわかりやすく表現されており、人生の教訓となる一冊だと思いました。
『PRIZE』を読んで感じたこと
この本でもう一つ学べたことは、1→10にすることと0→1にすることの大きな違いです。
編集者は作家の作ったものを赤入れして磨き上げることができても、
0から何かを作ることはできない。
そして、その0から何かを作ることが途轍もなく大変なことだということを痛感しました。
これらを作品の中で表現し、物語としても面白い上に距離感の大切さ、物作りの大変さを直木賞作家の村山さんが描かれていることでより現実的に感じることができ、読後により一層作家さんへの尊敬が増したように思います。
ちなみに著者の村山由佳さん自身も、2003年に『星々の舟』で直木賞を受賞しています。
直木賞を獲りたいと願う天羽カインを、実際に直木賞を受賞した村山さんが描いていると思うと、この物語がまた違った角度から見えてきます。
📚今回読んだ本
▶︎こんな人におすすめ
・作家や編集者など、本ができるまでの裏側に興味がある人
・人間関係の心理や、承認欲求を描いた作品が好きな人
・読後に「人との距離感」について考えさせられる小説を読みたい人
▶︎こんな人には合わないかも
・作家や編集者の仕事そのものを楽しむより、謎解きや派手などんでん返しを期待する人
・人間関係のドロドロした描写が苦手な人
・テンポの速い展開やアクション性のある物語を読みたい人
📚合わせて読みたい
作家の裏側を描いたミステリー
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人間関係の怖さを描いた作品
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