『ラットマン』|思い込みによって見え方が変わるミステリー

ミステリー小説

道尾秀介さんの作品は過去に何度か読んだことがあり、好きな作家さんの1人です。

今回、本屋でふらっと見つけて面白そうだったので衝動買いしました。

学生時代から続いているアマチュアバンドが次のステージに向けてスタジオで練習中に不可解な事件が起きることから色々な真実が明かされていく物語です。

メンバーも知らない壮絶な過去を持つ者。

他の人には言えない悩みを持つ者。

一体、これは事故なのか事件なのか?!

今回紹介する本はこちら👇

何重にも仕掛けられたミスリード

アマチュアバンド『Sundowner』

(=夕暮れ時に飲む一杯のお酒)のギタリスト・姫川を中心に物語は進んでいきます。

定期的に集まるメンバーたちのふとした雑談の中で、メンバーのひとり・竹内が心理学用語の『ラットマン』(錯視図形)について話し始めます。

一つの図を書いてみせ、同じ絵なのに近くにあるものに影響されてしまうことをメンバーたちは体験します。

そんなある日、いつも練習しているスタジオが閉店することを知ります。

スタジオでの最後の練習を終えたメンバーはふとしたことからスタジオのオーナーの姿が見えないことを疑問に思い、捜索し始めます。

その時、姫川の恋人・ひかり(元ドラマー)が倉庫で死んでいるのを発見します。

大きな機材を運搬中の事故であったように見えましたが、調べていくうちにおかしな点もいくつかあることに気がつきました。

実際にはここまでの描写である人物が怪しい行動をとっているシーンが描かれています。

警察からの事情聴取を終え、帰路に着くメンバーたち。

バンドメンバーたちの怪しげな行動が次々と出てきて、疑心暗鬼になっていきます。

これは事故なのか事件なのか?

事件だとすれば誰が犯人なのか?

この時すでに道尾秀介さんの手によって巧みに誘導されていることにも気づかないまま、物語に引き込まれていきました。

見る人によって「真実」が変わる

ここである疑問が湧いてきました。

タイトルにもなっていて、冒頭にも出てきた

「ラットマン」

これが意味するものは一体なんなのか、この時はさっぱり理解できていませんでした。

同じ出来事を見ていても関係性や近くにあるものに引っ張られ見え方が変わる。

見えているものは本当にそのままの意味なのかを考えさせられているような気がしました。

このあと明かされる新事実に驚きつつも、作品全体を通して「ラットマン」というテーマがきちんと表現されているのが理解でき、とても面白い作品だと思いました。

過去の出来事にも騙されていた

バンドメンバーたちが思い思いに犯人と思しき人物と接触していきます。

あるメンバーの誰にも話していない過去を振り返るシーンが描かれています。

幼少期に起こったある事件のワンシーンです。

そして、その人物は父親がした行動を真似ることで過去を昇華させようとします。

そのシーンを見ても私の中ではある仮説が生まれていて、

「きっとこういうことだったんだろう」

という思いで見ていました。

ところが真実を知ることで、過去の出来事の見え方まで変わってしまいました。

序盤から何重にも張り巡らされていた仕掛けが一気に回収された瞬間です。

自分の中である程度の推理をして読んでいたので、正直見破れたと思っていましたし、隠された裏まで読み取った気になっていました。

それは思い違いで、道尾秀介さんの手のひらの上で転がされているだけでした。

今まで見えていると思っていたものは、

「ネズミではなくおじさんだった。」

作中に出てくる心理学の絵を利用して言わせてもらうならそんな感覚でした。

二転三転する物語の真相に感心するばかりでした。

見る人によって変わるというテーマを見事に物語に落とし込んでいる作品でした。

少し重ための話ではありますが、最後に真相がわかり少し救われたような読後感でした。

📚今回読んだ本

▶︎こんな人におすすめ

・どんでん返しのあるミステリーが好きな人

・叙述トリックやミスリードが好きな人

・最後まで犯人を考察しながら読みたい人

・読後に物語を振り返りたくなる作品を読みたい人

▶︎こんな人には合わないかも

・軽い読後感のミステリーを読みたい人

・重いテーマや心理描写が苦手な人

・犯人当てだけを楽しみたい人

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『倒錯のロンド』

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