『アナヅラさま』|絶妙な情報の出し方に翻弄されたミステリー×ホラー

ミステリー小説

第24回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作。

「都市伝説×どんでん返し」

一見、ホラー小説にしか思えない表紙とタイトルですが、どのようなどんでん返しが待っているのか。

先の読めない期待感を持ちつつ、読んでみました。

今回紹介する本はこちら👇

ミステリー×ホラーのような作品

物語は、ある地方都市で女性が相次いで行方不明になっていることから顔に穴の空いたバケモノ「アナヅラさま」がいるのではと噂されているところから始まります。

この冒頭の話だけ聞くと、ホラーチックな話なのかな?

と思いますが、すぐに「アナヅラさま」の生活ぶりや日常が描かれ始め、都市伝説ではなく連続殺人なのだとわかります。

そんななか、とある探偵事務所に人探しの依頼が舞い込みます。

恋人がいなくなったので探して欲しいとのことでした。

そこで依頼を受けた探偵・小鳥遊穂香は最近噂されている「アナヅラさま」に関係しているのではないかと疑い始め、助手・綾野仁とともに調査を開始します。

犯人はわかっていたはずなのに

この小説の面白いところは、序盤からすでに「アナヅラさま」の行動や犯行に至るまでのシーンが描かれていることです。

住居から職場から全て明かされています。

好みの女の子を探して、「アナヅラさま」として行方不明とさせるまでの一連の動きを見せてくれています。

正直なところ、ここからどうやってどんでん返しさせるのか?

ホラーも混じっているので強引な結末になるのではないか?

そんな不安もよぎりました。

調査も進みいよいよ「アナヅラさま」の職場に小鳥遊が聞き込みに訪れます。

ここで小鳥遊は別件で「アナヅラさま」を探している人達がいることを知ります。

一人称視点の罠

この小説の特徴でもある「一人称視点」。

登場人物それぞれの目線から物語が描かれることで、読者は自然と「こういうことなんだ」と理解しながら読み進めることになります。

しかし、後になって振り返ってみると、そこにあったのはすべてを見せてもらっていたわけではなく、限られた情報を見せられていたという感覚でした。

あえて語りすぎないことで、読者の思い込みをうまく利用するように仕掛けられていたんだと思います。

この”勝手に思い込む”ことが知らず知らずのうちに起きてしまうことで、全てを明かされた時に大きな衝撃となって返ってくるような気がします。

嘘をついているわけではなく、本人の目線で見えたものを語っているだけ。

それにより巧みに誘導する文章の構成はとても素晴らしいと思いました。

勝手に深読みしてしまった

これはあくまで個人的な感想にはなりますが、この物語で出てくる「ハヤブサ探偵事務所」のメンバー構成や関係性が、以前読んだ

「探偵小石は恋しない」(著:森バジル)

の探偵事務所に似ている雰囲気があるな〜

と感じていました。

読み進めて真相に近づくにつれて、

もしかして同じような結末を迎えるのかな?

と、少し深読みしすぎました。

勝手に伏線を作って盛り上がってしまいました(笑)

これは私だけかもしれないですが、

物語がスムーズに進んでいくので、本当にどこが伏線なのかを考えながら読むと何もかもが怪しく見えてしまいました。

自分で考えれば考えるだけ結末で衝撃を受けることになるのでどんでん返し系の話は読み進めるのが楽しくて仕方ありません。

ホラー要素は好みが分かれるかも

ミステリー好きの中でもどんでん返しが好きな方は最後まで楽しめる作品だと思います。

ただ、ミステリー×ホラー小説である為、ホラー系や都市伝説といった話があまり好きではないと評価は分かれてしまうかもしれません。

実際、私もこの本については発売当初から気にはなっていましたが、ホラーという点が気になりなかなか手を出せませんでした。

しかし、読んでみるとそんなことも忘れるくらい物語に没入して読むことができました。

なので、気になっている方にはぜひ一度読んでみてもらいたいです。

📚今回読んだ本

▶︎こんな人におすすめ

・どんでん返しのあるミステリーが好きな人

・読者を巧みに誘導する作品が好きな人

・ミステリーに少し変わった要素が加わった作品を読みたい人

▶︎こんな人には合わないかも

・本格的なホラー小説を読みたい人

・怖さや恐怖描写を重視する人

📚合わせて読みたい

・探偵事務所を舞台にしたひと癖あるミステリー

→『探偵小石は恋しない』はこちら

・犯人がわかっているのに、なぜ面白い?

→『殺戮にいたる病』はこちら

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