受賞間違いなし、と自信を持って応募した推理新人賞であったが、応募直前に何者かに盗まれてしまった。
そして、賞を受賞したのは別の人物・白鳥翔であった。
原作者が盗作者を追い詰めていく叙述トリックミステリー。
叙述トリック作品を探している時に、30年以上前の作品で有名なものがあると知り、読んでみることにしました。
今回紹介する本はこちら👇
読者の思い込みを利用する巧妙な構成
この物語は、小説家デビューを目指す山本安雄が推理新人賞受賞を目指し、『幻の女』というタイトルで応募作品を書き上げるところから始まります。
いいプロットが浮かばず苦悩し、締め切りがどんどん迫ってくることに焦りを感じていたある日。
これは受賞間違いなしと思えるストーリーが浮かび、次々と文章が降りてきて作品を書き上げることができました。
完成後に、学生時代の友人・城戸に読んでもらい、ワープロで清書をしてもらうため、城戸に作品を預けます。
そして、城戸から完成版を受け取る約束の日。城戸は疲れから電車で居眠りをしてしまい、応募作品を盗まれてしまいます。
それを聞いた山本安雄は怒りと喪失感により城戸を責めたててしまいます。
作品を取り戻せると城戸から連絡を受けた山本安雄は城戸の家に向かいます。
そこで『幻の女』の作中で使われたトリックと同じ死に方をしている城戸の姿を目の当たりにします。
何気ない場面が最後に意味を持つ
盗作されたことを出版社に告発しにいっても、変な人扱いされるだけで全く相手にされず追い返されてしまいます。
同じタイトル、同じ内容で受賞した白鳥翔が許せない山本安雄は白鳥翔に自らの手で復讐することを誓います。
“原作者”と”盗作者”の戦いが始まっていきます。
この設定を読んだ段階では
「面白そうだ」
「これなら見破れるのではないか?」
と思いながら一気に読み進めていきました。
何気なく描かれている描写も結末を知った後で読み返すときちんと意味があったんだなと理解できました。
最後まで考察しても騙された
どんなとこで騙されるのか。
どこにヒントがあるのか。
どこで思考のズレが生まれるのか。
真犯人やトリックを見破るだけでなく、物語全体を疑いながら読みました。
それでも最後には
「そういうことだったのか」
と言わされてしまいました。
作者がどうやって騙そうとしてくるか気をつけていたはずなのに…。
その上でひっくり返されたので、さらに驚きでした。
トリックはもちろんですが、そこに至るまでの描写も普通の物語としても面白くどんどん読み進めることができました。
ただ、このトリックには賛否があるかもしれません。
私個人的は、それすら考えなかったということは有無を言わさずに「叙述トリック」だと思っているので「アリ」です。
見破れなかった悔しさもありつつ、作品のレベルの高さに感服しました。
30年以上前の作品にもかかわらず、今なお叙述トリックの名作として名前が挙がる理由がよく分かりました。
最近のミステリーとは違い、派手な展開ではなく読者の思考そのものを利用して騙す構成は、時代を感じさせませんでした。
王道の叙述トリックを読んでいる人たちにはぜひ挑戦して欲しい一冊でした。
📚今回読んだ本
▶︎こんな人におすすめ
・叙述トリックが好きな人
・思い込みを利用したミステリーを読みたい人
・最後まで考察しながら楽しみたい人
▶︎こんな人には合わないかも
・テンポの速いアクションミステリーが好きな人
・登場人物の心理描写より展開重視の人
・軽い読後感の作品を求める人
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