“イヤミスの女王”として知られる湊かなえさんが描く、家族と人間関係を軸にしたミステリ。
タイトルから介護とミステリの結びつきはどうなるのか想像もできず、どんな作品か楽しみに手にとってみました。
今回紹介する本はこちらです👇
「下巻」からしか読まない男
物語は嫁姑問題に疲れた主婦・美佐が自分の親代わりとして育ててくれた叔母・弥生の介護の為、数年ぶりに高校時代を過ごした故郷に帰る場面から始まります。
あんなに元気だった弥生さんが、認知症の疑いがあると役所の職員から連絡をもらい駆けつけることにした美佐。
そこで変わり果てた弥生さん、住んでいた家”みどり屋敷”の変貌に
「なんでこうなるまで帰らなかったのだろう」
と後悔します。
ゴミを片付け、掃除をしている最中に
昔付き合っていた元彼・邦彦から借りた
「ノルウェイの森」下巻が出てきます。
高校時代に邦彦が持っていることを知り、貸してもらうことになったが、邦彦は緑が好きで下巻だけ持っていました。
邦彦曰く、
「物語の扉はどこにでもある」みたいです。
人の上巻を知らなくても好きになれる。
そんなことも言っていた邦彦に惹かれ、付き合うことに。
そんな懐かしい思い出を振り返ったりしていました。
交換家事から始まる不思議な関係
弥生さんの様子を見に施設に行くと夫との思い出の手帳を持ってきて欲しいと頼まれ家の中を探します。
そこで、弥生さんが結婚当時つけていた日記を見つけてしまいます。
それを見ていると、弥生さんは当時姑との関係に苦悩していたことがわかります。
そこに邦彦の母・菊枝さんも登場します。
菊枝さんとは地域のサークルで出会い、意気投合します。
菊枝さんも姑との関係に悩んでいました。
ある日、交換家事をしないか?という提案を受けます。
週に2度お互いの家事を交換するというものです。
弥生さんは夫が海外出張に行っていることもあり、承諾します。
普段、怒られてばかりの嫁2人は互いの家で家事をし認められることで交換家事の日を楽しむようになっていました。
“ある事件”が起きるまでは、この生活は順調に進んでいました…
数十年経ち、美佐はこの出来事と向き合うことになります。
親の介護、嫁姑問題は身近にある
この物語では親の介護や嫁姑問題について触れています。
特に嫁姑問題では姑との同居で厳しい環境に置かれている様子が描かれています。
これはよくある話なのかもしれません。
特に一昔前は夫の両親との同居はよくあったのだと思います。
実際に私の両親は同居ではなかったため母のそういった姿は見ていないのであくまでイメージですが、大変だったのだと思います。
そして、もう一つ描かれているのが、「親の介護」です。
これに関しては母方の祖母が認知症を患い、母が通いながら家を片付けたり、デイサービスなどに入れてケアをしているので大変さは少しわかります。
ただ、いざ自分が親の介護をするとなると仕事、子供との時間などそう簡単には切り離せない部分もあります。
どれも大切だし、バランスよくできるのが1番ですが、そう上手くはいかないかなと思います。
何かを犠牲にしなければいけなくなる場面は、誰にでも訪れるのかもしれない。
そんな現実をこの本は考えさせてくれました。
そして、近い将来訪れる親の介護や実家の片付けなど通らざるを得ないであろう事から目を背けずに考えていこうと思います。
20代の時に読んでもここまで深く考えず、
「よくできたミステリだな」
で終わっていたと思います。
ミステリを楽しんだ上に、人生について考えるきっかけを与えてくれたこの本に出会えたことはとても良い縁だと思いました。
家族という関係の中で、善意や責任感がいつしか自分を縛ってしまう。
そんなテーマは『52ヘルツのクジラたち』でも印象的に描かれていました。
→『52ヘルツのクジラたち』の記事はこちら
日常の悩みをミステリに変える巧さ
邦彦は「下巻だけ読む」と話していました。
最初は変わった考え方だと思いましたが、読み終えた今では、この作品自体がまるで人生の下巻から読んでいるような物語だったと感じています。
登場人物たちの現在を知り、その背景を追いかけていく構成だからこそ、読む手が止まりませんでした。
湊かなえ作品の日常の延長線上に置いてあるミステリが絶妙でとても好きになりました。
今まではドラマや映画では観たことがあり、作風は好みに合っているのは知っていました。
改めて小説で読むととても読み応えがあり、読んでいる自分に置き換えて考えさせられる内容で他の作品にとても興味が湧いてきました。
正直、有名すぎて避けていた部分はありましたがこれからは気になる作品はどんどん読んでみようと思いました。
皆さんのおすすめの湊かなえ作品があればぜひXのコメントで教えていただきたいです。
📚今回読んだ本
▶︎こんな人におすすめです。
・日常に近い物語を読みたい人
・ドラマや映画のような作品を読みたい人
・人間心理などの描写をしっかり見たい人
▶︎こんな人には合わないかも。
・非日常のミステリを読みたい人
・王道のミステリを読みたい人

